|
実験創造工房試演が終わって、次の日。今回、自分の演じた『オイディプス・
2』について考えてみる。
ワークショップメンバーはご存知だろうが、一週間のうちに造りが二転三転し
た。
なんで、こうもまとまらなかったのかと考えたのだが、オイディプス本人のみに
囚われていたことが大きな理由だったらしい。
「オイディプス」という作品は多くの登場人物がいて、さらに様々な要素が絡み
合って構成されているにもかかわらず、オイディプスという人物を演じる事だ
けにしか焦点をあてていなかった(例えば、オイディプスを一切出さない演じ方
だってあったハズだ)。考えが固執していたのだ。結果、途中から、何をしたい
のか何を掘り下げるか何ができるかがわからなくなり、どんどんぬかるみに…
嗚呼、迂闊。
最終的に、前回のテキストを導入部分と退場部分で挟むカタチになった。
退場部分は林さんにアイデアをいただきました。感謝。
長ゼリフは、自分の居場所がハッキリせず、不完全燃焼だった。
組み立てがバラバラで、ひたすら叫びっぱなし。もっとグッと抑えた声を組み
込んだだけで、だいぶ印象が違ったと思う。
導入部分。
妻のイオカステの姿(?)で登場というのは、頭の片隅にずっと張り付いてい
たので、採用。あれをイオカステ本人、母の姿を真似たオイディプス、はたま
た第三者ets…どう捉えるかは、自由。どうとでも取れるようにしたかった。
目隠しにガムテープを使ったのは、(自分の中では)一番哀れであり、滑稽で
あり、日常的なモノであったから(ちなみに、目隠しは体の状態をひとつ殺す
(不定形にする)事によって、集中を高めるという狙いもあったのだが、隙間か
ら足元のみ見えるようにしたため、そっちに気が散ってしまった。ぐぶぁ!)。
そして今回、自分で一番気になったのは「罪」「妻」の言葉遊び。
これは、自分で行いながら興味深いと思った。
夜中に、ふと「妻」と「罪」は同じ音だと思い、ぶつぶつ言っていたら、小一時間
遊べてしまった。テキストからキーワードを抜き取り、あたかも早口言葉のよう
に羅列させたら、面白いかも、と思い、急場であるが組み込んだ。
あえて正確な文章は決めなかった。ある程度のパターンだけ決め、その場で
再構築するカタチをとった。
当日、稽古を含めて三回通したが、そのどれもがまったく違い、それぞれに発
見があった。
特に、本番で「つみ・つま」を連呼していたら「うま」という言葉が予想外に生ま
れ、生まれた言葉に対して「馬?」と自ら聞き返してしまったのは面白い発見
だったと思う。
改めて考えてみると、<言葉>とは無数の<音>の組み合わせで、テキスト
の台詞も、音(文字)を組み合わせて構築された集合体だ。
テキスト=ある人が<音>を構築して完成させた、ひとつの作品 なのだ。
音のモザイク?いや、レゴ・ブロック!
ちょうど、いくつもの細胞が集まって人間を創っているようなもので、そう捉え
ると、<言葉>の持つ可能性は計り知れない。解体したとき、いくらでも再構
築の仕方がある。
(この場合、<文字>ではなく<音>と捉えたい。発音によって、さらに幅が
拡がるから。)
例えば
「妻、罪包み、見つつ、罪、産む。妻、三つの罪。父は血の海。膿、包みつつ、
地に伏し、罪積む。」
これを『音』に変換すると
「つまつみつつみみつつつみうむつまみっつのつみちちはちのうみうみつつみ
つつちにふしつみつむ」
こう、並べてみただけで、奇妙な拡がりをみせる。さらに適当にスペースを入
れてみる。
「つ まつみつ つみみつつつ みうむ つまみっ つの つみちち はちのう
みうみつつみ つちに ふしつ み つ む」
さて、貴方はどんなイメージが浮かびましたか?
言葉に遊びを持たせると、聴く側(観客)にも受け取り方に幅ができる。
<音>の強弱、高低、リズム、間、大きさ、数、など、一文字だけでも様々なイ
メージを与えられる。受け取り方は自由、正解は無い。
まさに言葉遊び。
悲劇の台詞を使って、軽やかに遊ぶ事だってできるのだ。
―と、長々と書いたけど、自分の試演会での作品は穴だらけである。
身体の使い方、内面の集中力、ワークショップで学んだ基本的な事ができて
いなかった。
もっともっと、面白いことができたはずである。
今回の考察を踏まえ、もう一度チャレンジしてみたい。
|
|
|