記録 『エレクトラ』
実験・創造工房 研究試演Y
2004年12月1日(水)
ザムザ阿佐ヶ谷
監修 林英樹
モノプレイ
構成・演出・演技 MAIKO
10月30日
(エレクトラにするかカサンドラにするか自分でまだ決定していなかったので比
較を試みた。)
エレクトラ… 人間である。女である。父親が殺されている。それも母親とその
愛人に殺されている。母親が憎い。頼みの綱は実の弟。もう若くない。いつも
嘆いている。気性が荒い(と自覚している)。
カサンドラ… 人間である。女である。未来を予言する。でも誰も信じてくれな
い。父親と兄を殺される。
キーワードは『妄』。私が妄想が好きなので、「妄想」を世界の外枠としたい。
妄想・妄執・妄愁(造語・哀しみの妄想として)・妄囚(造語・妄想に捕らわれた
ままの人として)…「妄」という字、"目を亡くす"が「盲」なら、「妄」は"女を亡く
す""亡くした女"か。
妄想詩「エレクトラ・カサンドラ」
私の中にはカサンドラが住んでいる。
人は妄想だというが
何が現実で何が妄想かなんて、
一体誰が本当にワカッテいるのかしら。
この目に映るものだって、
私の肉体の一部である眼球が光の反射を集めて
脳で作り出した幻影に過ぎず、
仮想現実(バーチャルリアリティ)のある世界にかかれば
触れたその感触ですら本物かどうかなんてワカッタもんじゃないわ。
きっと人の一生はプログラムで出来ているんだ。
私というハードはたまに、
自分のプログラムを先に読み込んでしまうのだろう。
これから起こることが分かってしまう時があるのだ。
でも人はそれを妄想だというわ。
私の中にはエレクトラが住んでいる。
お母さん、昔はあんなに愛してくれたのに。
やわらかくて優しいお母さんの声と胸、におい。温度。
貴女が私を嫌うのは、
私が貴女の良心だからかもしれない。
貞淑で、家族思いの、穢れを知らない『正しい女』
お母さん、貴女は可哀想な人。
とっても汚らわしい、俗物の塊。
とてもかわいそう。
汚れは二度と落ちないし、失ったものは二度と戻らない。
妄想、妄想、妄想。
心を亡くせば忘れ、目を失えば盲いるというのなら、
妄想は女を亡くしたから?
"女"が見えない。
見失う。
女を見失う。
それとも何かを失った女は妄想に生きるしかなくなるってこと
妄想、妄想、妄想。
でも私にとっては本当なの!!
お願い信じて
あなたを失いたくないの
これから起こることは全て本当
「だまされた」と言って私を殴ってもかまわないから
妄想と言うなら もう それでもいいから
お願い 信じて 行かないで
妄想詩2「カサンドラ症候群(シンドローム)」
私には見えるの
皆の悲鳴が
血まみれの顔であなたはこっちを 見てるわ ほら
信じたくなければ 信じなくてもイイノヨ
やっぱりだめ 本当なの 信じて頂戴
だってあなたは私の大切なお友達だもの
アノ子イッツモ変ナコト言ッテル
自分ニハ未来ガ見エル ダナンテ
ソンナマネシテマデ皆ノ注目ヲ引キタイノカシラ
恐イワネェ 妄想癖ッテ、アアイウコトヲ言ウノネ キット
ヤダ ヤメテヨ 変ナコト言ウノ!
アンタト話シテルト コッチノ気ガ変ニナルゥ
ヤメテ ソンナ目デ見ナイデ
気持チガ悪イノヨゥ
アー ヤダヤダ オオ イヤダ
大事にしたい!と思う気持、
大事にしたいのにー!というジレンマ、
ちょっぴりの優越感。
私の言うことは正しくて。
信じない理解出来ないおまえらはバカ。
妄想は最強。
妄想はステキ。
妄想は私を傷付けない。
私は毬栗(いがぐり)をうらおもて
ひっくり返しちゃったようなオンナノコだ。
(フカフカの外身にトゲトゲの心、口からは血。)
11月某日 今回も「エレクトラ」に決定する。
(THE BOOM(敬称略)の『手紙』をヘビーローテーションで聞きながら思
案。)
好きなキーワードのひとつ、「手紙」も使ってみよう。
<妄想・心の中を飛び交う声(言葉)・手紙>
そして「私の信じていた正義は間違いだったのか」という、世界の崩壊。
よし、今回はこれで行こう。
これで用意する物も明確になった。
・「エレクトラへの手紙」テキスト
・テキストとBGMを撮った、心の中を表す音源(MD)
・肉の塊?生肉。銀の皿に。
・ナイフ
衣装:黒(喪を表す。または何ものにも染まらないという意)
・ワンピース・くるぶしまでのスパッツ・マニキュア・ペティギュア
ヘアスタイル
・ワシャワシャとしたアップスタイル(もう若くないという記号)。
メイク
・目の周りは濃い黒でシャドーを入れる(映画『ブレードランナー』のダリル・ハ
ン
ナよろしく)。でもキレイに。ラメ!
時間
・3分!!目指せ3分!!ぎゅぎゅっと濃く!!
☆基本的に舞台上では無言。無口な人のほうが頑固なのだ。内に秘めて頑
な。周りとの折り合いをつける訓練がされていない。過去の私の姿でもある。
エレクトラを演じている舞台上では、エレクトラに対して極めて誠実に。それ
は、私が大事にしているものやポリシー、失いたくないもの、私自身の正義と
同等に扱わなければならないだろう。
BGMの台詞は、世間とのバランスをとろうとする、もう一人の私。(実際の私
の)母の価値観かもしれないし、社会で生きていく為に必要だから身につけた
一般的な感覚。モラル。正常。
「明るく生きたほうが楽なのに」という考え方、ある実在の人物に対する私の
感想であり、私に対する母の感想でもある。言われると余計に息苦しい。レッ
テルを貼られる方は口をふさがれてしまうのだ。だから息苦しい。だから篭も
る。ますます口を閉ざす(というか言葉を上手く喋れなくなる)。心の中には言
葉が飛び交うのだ。パンク寸前。まもなく致死量、運がよければ気が狂えるか
もねという世界に、今回のエレクトラは生きていることにした。
11月24日音源作成
ちょっとナルシストっぽくてやな感じ(笑)SUGIZOさん(以下敬称略)の楽曲が
カッコ良過ぎるせいか。すべて小島麻由美さん(以下敬称略) にすれば(ナル
度は)薄れるが…。
でも過去の試演会で試した"心の中を飛び交う声・言葉"(『エレクトラ1』)と"周
りから侵食してくる声・言葉"(『エレクトラ2』冒頭)を、音源としてなるべくイメー
ジに近付けるように、スタジオでじっくり作れたのがよかった。コンディションも
安定させて出来たので(何しろスタジオで1人)、今までの中で一番楽しかっ
た。
11月25日
悩んだ末SUGIZOの楽曲を採用。小島麻由美の声と私の声は似てるのでわざ
と使ってみよう。
<小島麻由美パート>動かない。お客さんの誰か一人を狙ってずーっとみつ
めあう。起こることを味わう。でも自分がお客さんの立場だったら試されてると
私は頭に来るので、そこは慎重に。
<SUGIZOパート>盲目に働く様子。働かされている。動かされている。操り
人形。気付きたくない事実(まちがっていた正義・母殺し・過ぎてしまった長い
歳月など)に無理矢理眼を向けさせられそうになる。狂気の沙汰?
エレクトラの仕事と実際の私の仕事の動作をループさせたりさせなかったり。
目的は、侵食してきた言葉や心の中の言葉によってどんどん何かがたまって
いくこと。(なので、動くことが目的ではない。)
そして、パンク。
11月29・30日
最後の悪あがきで両日録音。あともう一息…なんだけど。
<SUGIZOパート>動きすぎてしまう為、エレクトラのその後をやることにした。
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