試演総括

実験・創造工房 研究試演Z
2005年4月18日、19日 19時ー 
ザムザ阿佐谷
監修 林英樹

モノプレイ+1 『オイディプス/水』 作品総括  桑原 健
今回は、初の共同作業による『オイディプス』の作成だった。

今までひとりで創ってきた作品を基盤にするとはいえ、作業は思ったより難 航。共演者の山内氏とふたりで作り上げた『オイディプス/水』はどのように立 会いの人々の目に映ったのだろうか?


二人でまず始めたのは、方向性についての話し合い。ここにずいぶん時間を かけた。なるべくリラックスした状態で話がしたかったので、食事をしながら、 という事が多かった。

前回までのオイディプスは客席からどう見えていたのか?一人から二人にな った事による、有利な(あるいは不利な)事は何か?二人目の存在をどう位置 づけるか?など、雑談を交えながら出た事を片っ端からノートに書き込み、拾 い上げていった。

不思議なもので、関係ない話からの方がイメージが広がったりする。今回、新 しく加える要素として<ゴミの山に埋もれる女>というものは初めからあった ので、そこから色々付け足していく。


テキストは基本的に桑原が担当。まずは短いシーン(テキスト)をいくつか書 き、順序やつなぎ方は後から加えようと思い、ト書きもあまり書かなかった。実 際、本番で行った作品は、当初の台本とまったく違っている。立ち稽古も即興 を中心としてシーンを創っていった。

客席側から動きを確認したりするのが難しく、鏡を使ったり、時にはケータイ の動画を使って代用。音を入れるときには、ひとりが舞台から出たりと、その あたりは大変不自由であった。


二人になった事で、相手役がいる事の嬉しさと難しさを改めて実感した。とに かく、あらゆることが予想(予定)通りに運ばない。自分の想定してきたイメー ジや展開などは稽古開始から5分で吹き飛ぶ。そして、舞台上では次々と想 定外のモノが生まれてくる。それに乗るか?遊ばせるか?はたまたぶつかる か?沈黙するか?そうこうしているうちに、テキストにない言葉が飛び交う。ひ とつのシーンが生まれる。

舞台上での展開の仕方が、一人の時とは桁違いに早く、広範囲である。消え ないうちに拾い集め、いくつか試してみる。徐々に道筋が決まってくる。しか し、それがまた、あっさりとひっくり返ったりする。

<幅が広がる>ということは、それだけ整理の仕方が難しくなるということだろ う。

だが、その分、自分ひとりでは生まれなかったであろう発想やテキストの解釈 がたくさんあった。人数が増えるという事は、不自由になるという事だが、不自 由だからこそ広がりが大きくなるのだと思う。

そして、こうなると<演出者>の重要性が浮き彫りになる。一歩引いた所から <場>を見つめる人物の不在は、明らかに不利な要素であった。

今回の作品では、(ふたりで)構成をしただけで、演出までは至っていないと思 う。良い要素は多く出ていたのに、それを濃く煮詰めるところまで行けなかっ たのではないかというのが正直な所だ。


何より悔やまれる事は、一日目と二日目でやり方を変えた事。それに対して は様々な意見があると思うが、今回に限って言えば、あれは私自身の心の弱 さである。見え方として良い悪いではなく、あそこで揺らいでしまったのが問題 なのだ。

とはいえ、モノプレイで創り上げて来た基盤に、新たな要素を加えた今回の作 品は、次に繋がるものであったと確信している。あの作品は我々にしかできな いものだ。

相手役を快諾してくれた山内氏には色々な面で助けられた。この場を借りて、 改めて御礼申し上げます。


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