創作日誌

実験・創造工房 研究試演Z
2005年4月18日、19日 19時ー 
ザムザ阿佐谷
監修 林英樹

『オイディプス/水』
構成・演出・演技 桑原健、山内直太(taf)

2005年03月16日
初回の話し合い。

お互いに参考資料を出し合い、話していく中で思いついた事をノートに書き込 んでいく。

桑原=イオカステ(他)のポジションは継続するので、山内=オイディプス? 『コインロッカー…』の主人公?ets…をどうするか話し合う。ひとりからふたり になった事で、できる事は多くなったが、キチンと選別していかないとゴチャゴ チャになってしまう。

やりたい事とやれる事。
極力シンプルに。無駄なく。


桑原の演じる女に<片付けられない(捨てられない)女>という要素を付け加 えるというのは、以前からあったので、ゴミを舞台に出す事は決定になりそう。 前回から考えていたプールの使用も検討。

ゴミ=記憶=捨てられない(でも捨てたい)

そうして動けなくなった女。そこに関わる男。

*ちなみに、今回の<片付けられない(捨てられない)女>のイメージ作成に あたり、『片付けられない女たち』という本を参考にしたが、彼女たちは注意欠 陥障害(ADD)、または、注意欠陥多動性障害(ADHD)という障害を持つ女 性たちで、心理的要因は特に関係ないそうである。

この障害を持つために悩みを抱える人は男女問わず世の中にたくさんいる。 今回、我々が扱おうとしている<片付けられない(捨てられない)女>とは意 味合いが違うので、そこはハッキリさせておかなければならないだろう。*


色々出てくるがカタチにならない。とりあえず次回へ。

2005年03月23日
山内が急用のため、本日の話し合いは延期。


ネット上で<2人組の悪餓鬼>という論文を見つけた。
非常に興味深い内容で、『コインロッカーベイビーズ』での着眼点も、自分の 考えに似ている。ボンヤリとしていた部分をハッキリさせてくれた。
(ちなみに題材として取り上げられている作品は『コインロッカーベイビーズ』・ 『鉄コン筋クリート』・『恐るべき子供たち』・『悪童日記』の四作品)

この論文で取り上げられているのは、すべて二人組の子供たちである。
今回、我々が創る作品の基盤は<捨てた><捨てられた>という関係、あく まで母(イオカステ)と息子(オイディプス)なので、その違いはハッキリと意識し なくてはならない。

この論文では「二人の悪餓鬼はそれぞれが孤独であって、そのためお互いを 必要としている」という。
では、イオカステとオイディプスには当てはまらないかというと、そうではないと 思う。

予言の成就を恐れ、自分の子を捨てざるを得なかったイオカステ。その後、ラ イオスが死に、オイディプスと出会うまで、彼女は女王としてひとりで国を支え てきた。
オイディプスと出会うまで、彼女は子供を産んでいない。それは、予言を恐れ ていた事に重ねて、子を捨てた事に対する罪の意識があったからとも考えら れないだろうか?<捨てた>ゆえに<捨てられなくなった>記憶。後悔と罪の 意識が、彼女を長い間、苦しめていたのではないだろうか?
オイディプスもまた、恐ろしい予言の成就を避けるため、(育ての)父と母の下 を去り、流浪の旅に出る。二人はお互いに孤独である。
孤独ゆえに、二人は強く結びついたのだ。

水=海=母性
プールは必要
ゴミ=捨て子=孤独


家庭用のプールを急いで入手しなければならない。

2005年03月28日
とりとめのないイメージの羅列もだいぶ方向が定まってきた。
水曜日までにテキストを完成させ、どんどん動きながらシーン創りをするという 事になった。

テキストを引用した短いシーンを<つみつま>のような言葉遊びで挟んでい く。

2005年03月29日
ネットで家庭用プールを販売していた。
送料別で2000円。
思ったより安かった。

2005年04月04日
テキストを眺めつつ、話し合い。

WSのあと、うめちゃんを交えて食事しながら打ち合わせ。色々と参考意見を 聞く。

2005年04月06日
オリンピックセンターで、立ち稽古(元々、本読みをするような台本ではないの で、直接立ちに入ったのだが)。

プールを置き、ゴミは手持ちの荷物などで代用。
アップをしながら、途中からテキストを使い、即興でシーン創り。いきなり、テキ ストに書いてあるのとまったく違う展開が生まれる。

山内の持ってきた曲がシーンに使えそうなので、キープしておく


WSのあと、参加者数人と食事。
話の最中、「ゴミの中身は新聞紙でいいのでは?」という助言をもらい、採用。 持ち運びがしやすくなった。

2005年04月08日
基礎1(Fメソッド)を使ったアップから、テキストへ移行していく。またもや予想 外の展開をし、新たなシーンが出来上がる。

毎回の稽古が実に楽しい。その日、その時にまったく新しい瞬間が生まれてく る。取りこぼさないよう、必死に拾い集める。

「とにかく、くだらないと思った事や、こんなモノ使えないと思った事でもなんで も、その時に出してくれ。そこから広げていこう。」と伝える。

シーン@から長ゼリフまでの展開はほぼ決定。
当初考えていたものとはぜんぜん違う。だが、より厚みがでてきた。


男=孤独・女の記憶や情報、
ガラクタなどの集合体(のようなもの)
として存在させる。

女=捨てた罪の記憶(ゴミ)
によって動けなくなった母・
ゴミに汚染された母性(海=プール)・
男の思い描く心象風景。

主と従は常に入れ替わる。
目線や立ち位置、プールの内・外、
動・静によって
客席からの焦点を一定にさせず、
変化させ続ける。

「遊び」の要素を常に忘れない。
原作を知らない人や子供でも興味が失せないような、
もっとも原始的なシーン構成をとる。


稽古後、食事をしながらミーティング。後半のシーンについて話し合う。
鎖の扱い方、ラストまでの流れ、イメージではあるが、ほぼまとまった。明日の 稽古で実
践してみよう。


*今のところ順調だが、我々は早く行き詰らなければならない。その時は必 ず(何度も)来
るし、そこを通らずに、作品創りはありえない。

残り十日を切った。

2005年04月09日
このままではマズイ。

オープニングから音は必要か?

2005年04月11日
(今日の)WS参加者は桑原、山内、中村さん、上田さん、酒井さん。

現在できている箇所までを発表。案の定、ズタボロになる。
ひっくり返される事はある程度予想はしていたのだが、一番自信を持っていた シーンの構想が、一番反応が悪かった。

今日、発表の機会が無ければ、何も疑わずに創っていたかもしれない。
やはり、未完成でも、いろんな人に見せて、第三者の意見をどんどん聞く事は 大事だ。

あと一週間。ここからがヤマ場。

2005年04月14日
ラストのシーンが決まらない。ここまでの創りは、いい流れができたと思うが、 用意していた長ゼリフやキーワードが、イマイチしっくりこないのだ。

何かを表そう、キレイにまとめようという意識がジャマをしているのかも知れな い。

むしろ、動きにしてみては?

2005年04月15日
昼〜夜通して稽古。


<昼の部>

セットを組んでの稽古。
シーン@からの確認とシーンD以降の作成

後半のシーン創りが難航。
あれこれ考えていたが、ふと、ふたりともプールから出てみたら、初めてプー ルの青色(水)が強くなった。
「これ、海だよね。ゴミの山(記憶)の中に残る海(記憶)。」という事になり、海 (母性・生命)の傍らに二人が寝ている図が出来上がる。そこから逆算してシ ーン創り。

男がプールの中にいる時、女がどう関わっていくのか?といろいろ考えたが (男の白い衣装に色を塗るとか)、あまりピンと来ず、自由に動いてみる。足に 鎖をつけ、ズルズルと引きずりながらプールの周りを一周する。「その鎖の端 を男が見つける」というシチュエーションから広げてみて、二人が寝るシーンへ つなぐ。

人から犬へ、犬から液体へ。白と黒が混じりあい、ひとつになり、また分かれ る。ふたりの手には鎖が残った。
辺りには波の音――。ゴミと海と、罪と妻と、シロとクロ。
そこは胎内のような、脳内のような、夢の島のような…

ざざあ、ざざあ…      おぎゃあ、おぎゃあ……



でも、あるある探検隊。



<夜の部>

ひとまずカタチはできたが、お互い台詞の怪しいところが多い。長ゼリフのシ ーン中心に返し稽古をする。

初の通し稽古。


      本物の水は使うか?いまだ決まらず。


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