【実験・創造工房】


創作日記
『オイディプス・U』
モノプレイ
構成・演出・演技 桑原健

実験・創造工房 研究試演W
2004年6月28日(月) 
麻布ディ・プラッツ
監修 林英樹

『オイディプス・2』創作日記 そのE
オイディプスはイオカステの死を目の当たりにした時、自らの目を串刺しにし た。『自害』という選択をしなかった。その点で、彼は強い人間だと思う。「首を くくっても、なお償いきれるほどのものではないのだ」と言ったオイディプスは、 実父、実母を死に至らしめたおのれ自身を誰よりも憎み、汚らわしい存在だと 呪った。
そして、自分に罰を与え、自らを傷つける事で自我を保った。それは、狂う事 すら自分には許されないという戒めなのかもしれない。


彼は、許しは求めていない。
姿をさらし、「生きること」が彼自身が与えた罰なのだ。

自分の立たされた状況を嘆くより、立ち向かおうとしたのだ。
「自害(自殺)」とは、「逃げ」だ。
困難から逃げず、苦しみの生を選んだオイディプス。彼は強い人間だ。

ギリギリのラインで踏みとどまり、自らの姿を直視する人間の発する言葉の力 は計り知れない。
飾りを脱ぎ捨て、痛みを受け止め、それでも生きる。生きる。生きる。
ああ、なんて悲しくも美しい姿であろうか。

「苦しみ」とは「生」だ。痛みを知るから、優しく、強くなれるのだ。


目を潰したオイディプスには、いったい何が見えていただろうか?


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シアターファクトリー企画
林英