『アンチゴネ』 構成・出演 佐藤和紅
実験・創造工房 研究試演]T(11回目)
2006年6月26日、19時ー
ザムザ阿佐谷
監修 林英樹
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S.UESUGI
身体が実体としてそこにある。その身体は時に躍動し、時に周りの全てを飲
み込むほど動かない。手の指先から足の指先まで身体が意思を持ってしなっ
ていたかと思うと、顔面がドロドロと熔け、気がつくともはやそこには過去の自
分はなく、光る目だけが残されている。花が痛い、白い服が痛い、歪んだ笑顔
が痛い、心が痛い…佐藤和紅は『アンチゴネ』を表面で捉えることはなかっ
た。自分自身とアンチゴネに正面から向き合っていた。その真摯な態度は、
自分の全てを、自分の現実をしっかりと見据えるに充分だったということが、
十数分間の中に凝縮された身体を通して、わたしの身体の奥深くまで届いて
いた。
佐藤和紅は、まるごと素敵な人だ。彼女の真剣さに心から拍手を送りたい。
T.SAKAI
ライトアップされると鮮やかに視界に飛び込む白の衣裳、妖しげな動き、引き
込まれていく自分。ニュース記事での母と娘の会話、嫌な(?)事件が続くとい
った言葉に覚えた違和感は言葉齟齬ではなく果たして何なのか。家族殺し、
幼い児童が巻き込まれる犯罪の連続、私達が共有しているのは不安感を通
り越し、こうした事件にさして何も思わなくなっている感覚の麻痺なのかもしれ
ない。構成が素晴らしい、緩急混ぜ合わせ、ぐんぐん引き付けていく出演者の
実力の高さに驚いた。このままでも公演できる作品だと思う。思考の深さを感
じました。
S.KAWAI
醜い花を捨て、綺麗な花も捨てる。その辺から強物だと思った。激しいダンス
から、静の展開も印象的で花の束を使ったのはとても効果的だと思ったが、
静が長過ぎるように感じ、終わったのかなと思ってしまった。最後に笑ってま
た日常のシーンに戻すのも、よかった。
K.KUWAHARA
アリです。「自分にできる事は何か?」という問いかけと、その答え。動から静
へのチェンジ、お見事。最後が一瞬打つ合わせミスのように見えてしまいまし
た。
根岸佳南江
花嫁の「白」に赤い束。ブーケが合ってるかも。影が綺麗でした。言葉。情報と
して、内容が早口だったり、聞き取りづらかった。ラスト?後半が何のための
間か…。ちょっとイラっと。
藤井理代
リンクするものは…。そう、親子関係と、他人、自分を取り巻くものへの、もや
っとした「違和感」。綺麗な服も、花束も、本当はきっとぐちゃぐちゃにしてしま
うくらいいらない。花を踏んでいく所は好きだった。ドキッとしたが、少々その後
のダンスっぽい振り付けがまたおかしい。違和感だね。最後、あれは何だろ、
夢だったのか。カックン。花の匂いが生々しい。
S・A
花束の意味を知るヒントをもう少し与えて欲しいです。とりあえず私は「自分」
かな?思ったのですが…?花の束なので…恋愛?美?年齢?…もっと別の
何か?…とずっと考えていました。何ですか?とても美しかったです。あと早
口のところ、意図が伝わりにくかったです。
Y.TAMEGAI
私、和紅さんをみくびっていた…。彼女の力ってこんなに強かったのかと…と
てもビックリしています。そしてこんなにも女性らしく、女性のやられてもがいて
いるみたいな所とか、目が離せないような感じだった。
Y.SAWARA
最初のロックの場面はもの凄く迫力があった。一瞬で惹きつけられた。一部
の無駄も隙も無く、圧倒的な威圧感がとてもよかった。語りのシーンでは言葉
も面白かったけど、何度か台詞が聞き取れなかったのがとてももったいなか
った。倒れて終わりなのかと思ったら、その後少し間延びしてやっと終わりに
なった気がした。目が泣きそうだったのがとても印象的でした。
無名
青臭い、花びらのつぶれる匂いが良いなと思ったのですが、狙いですか?花
束の表わすものが自身とみると、なるほど、と思います。束ねられ抜かれちぎ
られ踏み潰され、変な事件なのか。「アンチゴネ」を知らないので、知ってから
見るのと知らないで見るのと、とても違って見えそうだなと思いました。
C.TAIRA
変な事件という言葉が出てきたけど、きっと変な事件なんか無いんじゃないか
と考えさせられました。他人が死んだり、傷ついたりしたとき、人は大して関心
を持たないくせに自分の周りの人が同じ目に合うと悲しんだり、悲しんでいる
フリをしたり。人って汚いんだなと思いました。花を持ったときに周りは汚い物
だらけだけど、せめて自分の周りだけは綺麗にしようとしたのかなと思いまし
た。
N.HASEGAWA
前半の踊りまくってるあたりまでは、ぶっ飛んでて手をつけられない感じで、非
常にエネルギーを感じたが、テクストを使いだしたあたりからどうしても隙だら
けになってしまったと思う。強いイメージがあるんだろうなとは思うが、イメージ
を表現にする間に、ノイズがかなり混ざってしまってはいないだろうか。
上田誠子
お母さんは関係ないのね。何故最初はいきり立っていたのか、それは最後の
ホームにつなぐ手がかりなのですか。ならその真ん中のニュースや事件は何
なのか。考えれば、考えるほど深い渦に飲み込まれそうになるので、もう少し
整理をしたいです。
入好亜紀
仕組まれた罠。でも最後には逃げられた感じ。こっちが掴まったのに、あれ?
という違和感。それが狙いなら素晴らしい。前半シーンは佐藤和紅にしかでき
ないと思った。それをもっと極めて欲しい。まだ少し、逃げ道があったから。で
もラストは少しくどく思ってしまった所も有り。
Y.SASAKI
それが狙いだったのかどうかは定かではないけれど、黒幕に写った「巨大な
奴」(影)が非常に面白かった。どちらが幻影で、どちらが実体なのか。「影絵」
的な遊びがあってもよかったのでは?("影"を意識していたのだとしたら)自
分の武器を知っている人だな、という印象。それ故、そうでない(不得意)部分
での弱さがモロに出ていた。(グッド〜のあたり)
K.YOSHIDA
斬新ではあるけれど、音とリンクしすぎ。むしろリズムをずらして身体が反応
するのを抑えたほうがよかったと思う。長い間が生かされていない。
A.MASUNAGA
新アンチゴネ。彼女らしい世界観と解釈で突っ走ってくれた気がします。ストレ
ートにやりたい事が伝わってきて、よかったです。表情が素敵でした。目が特
に。
佐藤多美子
現代のアンチゴネと捉えていいのでしょうか。この物語は決して遠い昔の伝承
ではなく、今も常に現在進行形で行っているのだと。
M.TAKEDA
花が散る所、最後の表情が印象的でした。最初から惹きこまれました。
H,SANO
花…幸福?踏み出しながら前へ進む姿は印象的でした。
T.KISHI
闘う日常、女性の強さ。走って、走って、走って…それでも叶わぬ理想もあ
る、それでも走って、走って、走って…。闘う女性、「兄を埋葬したい」アンチゴ
ネーの想いのごとく、強さとは美しさでもあるのかな。
M.TUCHIDA
勢い、力、身体。糸が切れないのは凄い。ずっとテンションがかかり続けて
た。耳に聞く事件。物事より、今目の前で花をむしっている事のほうがひどい
様に見えてならなかった。
T.NAKA
淡々と語っていたのにもの凄く心魅かれた。どうしてだろう?そんな感覚を思
い出した。日常の―何気ない―はずのものに対して何故か違和感を抱く瞬
間、私は日常の何を見たのか?
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